腹膜透析は、1日数回、患者さんご自身でより清潔に接続できる機械を用いて透析液バッグを交換するCAPDと、夜間就寝中に自動的に透析液を交換する機械(自動腹膜灌流装置)を用いて、透析をするAPDという方法があります。
透析液を腹腔内に出し入れできるように、「カテーテル」という管をお腹に埋め込みます。
カテーテルは、やわらかいシリコンで出来ています。
通常、麻酔を使用し、痛みをコントロールしています。
カテーテルの先端は、直腸と膀胱の間にあるダグラス窩に位置します。
カテーテルがお腹から出ている部分を「出口部」と呼びます。お臍の下で右側か左側かのどちらかの位置になります。ベルトのラインは避けるようにします。
従来の腹膜透析の手術ではカテーテル挿入術を行って、すぐにCAPDを開始する方法がとられていましたが、近年、カテーテルの埋没とカテーテルの取り出しを2期に分けて段階的に行うSMAP(スマップ:Stepwise initiation of PD using Moncrief And Popovich)法が行われるようになりました。SMAP法では従来法と比較して以下のようなメリットがあります。
当院では現在、SMAP法でのCAPD導入が多くなっています。
通常、治療を開始し安定したら、注排液にともなう痛みはありません。透析を開始した直後は、お腹が張ったような感じ・肛門の近くでの違和感・液の出し入れの時に痛みを感じる患者さんがみえますが、自覚症状は1ヶ月以内にほとんど消失します。
操作自体は難しくありません。繰り返し練習することで、ほとんどの人が覚えることが出来ます。大切なことは、ばい菌で汚染されないように清潔操作を行うことです。
カテーテルや出口部が濡れないように、ビニール製の袋をお腹に貼り付けて入浴します。出口部の状態が良く主治医からの許可があれば、出口部をシャワーで洗うことが出来ます。
食事は、基本的にはバランスよく摂取してください。
CAPDの一般的な食事注意ポイント
塩分 | 保存期と同様に7~8g/日と注意して摂取する事が望ましい。 |
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カロリー | 透析液からカロリー摂取があるため、体格にもよりますが、カロリー摂取過多にならないようにして下さい。 |
カリウム | カリウムが比較的自由に摂取できるのはCAPDのメリットの1つです。 腎不全保存期に比べ、生野菜や果物などの摂取が増える場合が多くなります |
水分 | 尿量が確保できている場合は、水分制限は緩やかです。 |
蛋白質 | 基本的に、蛋白摂取量(グラム)=標準体重(キログラム)×(1.0~1.2)となっています。保存期より多い蛋白摂取が可能です。 |
透析液と必要な物品がそろえば、基本的にはどこでも旅行することが可能です。透析液や物品をご自分で旅行先に持参するか、旅行先に配送の手配を行うなどの対応も可能です。(海外も特殊な地域を除けば可能です)旅行をされる時は主治医に許可をもらい、スタッフに早めに相談して交換スケジュールや注意点など確認しましょう。
患者さん自身の生活様式やスケジュールに合わせて行えますので、社会復帰が容易なのが腹膜透析のメリットの一つです。職場でのバッグ交換が必要な場合は、清潔な場所や時間を確保します。生活スタイルに合わせたPD処方を主治医と相談しましょう。
透析を行うことで日常の生活は問題なく過せるようになります。
透析液を貯留して生活することになりますので、過度の腹圧や出口部に負担のかかるスポーツなどは避けてもらったほうが良いと思われます。
腹膜透析を長期に続けることで、生体膜である腹膜が徐々に変化し、腹膜機能の低下が見られることがあります。その際には他の治療法への移行を考えます。継続期間については個人差もありますので、主治医へ相談してください。
腹膜透析最大の特徴は、透析導入後も血液透析に比べて長い間尿が出ることです。腎機能が減ってきたら(尿量の減少)、透析量を増やすための治療を考えます。具体的には腹膜透析と血液透析を組み合わせたり、あるいは完全に血液透析に移行をします。